「回復期病院でリハビリを受けているけれど、このままで大丈夫なのだろうか?」
自費リハビリPlusimでご相談を受けていると、 回復期リハビリテーション病院に入院していた頃について、 ご本人やご家族からさまざまな疑問や不安を聞くことがあります。
「あのとき聞けなかった」
「誰に聞けばいいのか分からなかった」
「退院してから初めて知った」
そんな話も少なくありません。
私自身も、理学療法士として回復期病院で臨床を経験してきました。
回復期病院では、医師、看護師、PT、OT、ST、医療ソーシャルワーカーなど、 多くの専門職が関わりながら、限られた入院期間の中で退院後の生活を目指します。
一方で、医療者にとっては当たり前になっていることが、 患者さんやご家族には十分伝わっていないこともあります。
そこで今回は、Plusimの自費リハビリの現場で実際によく聞いてきた 「回復期病院での7つの疑問」 について、一つずつ考えてみます。
最初にお伝えしたいこと
この記事は、回復期病院やそこで働くスタッフを批判することを目的としたものではありません。
病院側の事情と患者さん・ご家族側の不安、その間にある 「情報のすれ違い」を少しでも減らすこと を目的にしています。
これは、ご家族から聞くことがある不安の一つです。
結論から言えば、 「若い=良いリハビリができない」ということではありません。
経験年数は一つの要素ではありますが、 年数だけで専門職としての能力を判断することはできません。
若くても熱心に勉強し、 患者さんの状態を丁寧に評価し、 先輩や他職種と相談しながらリハビリを進めている療法士はたくさんいます。
回復期病院のリハビリは、 担当療法士一人だけで完結するものでもありません。
医師、看護師、PT、OT、STなどが情報を共有しながら、 チームとして退院を目指していきます。
「今は何が問題なのでしょうか?」
「この練習は何を改善するために行っていますか?」
「退院までにどこを目標にしていますか?」
こうしたことは、遠慮せず聞いて構いません。
家族としては、最も知りたいことの一つだと思います。
「歩けるようになりますか?」
「手は動くようになりますか?」
「仕事には戻れますか?」
しかし、脳卒中後の回復を正確に予測することは簡単ではありません。
脳卒中の重症度、障害された部位、発症時の状態、運動・感覚・認知機能、 年齢、合併症、その後の経過など、さまざまな要因が関係するからです。
と将来を断定することには慎重である必要があります。
ですから、担当者がはっきりと断言しないこと自体は、 必ずしも「分かっていない」「逃げている」ということではありません。
一方で、 「分かりません」で説明が終わってしまうのも違う と私は考えています。
将来を断定することはできなくても、
- 現在どこまで回復しているのか
- 今どんな機能が残っているのか
- 何が動作を難しくしているのか
- 現在何を目標にしているのか
- 今後どんな変化を見ながら判断していくのか
こうした現在地については説明できます。
「今の状態から見て、どこまでを目標にしていますか?」 と聞いてみてください。
マッサージや徒手的な介入そのものが悪いわけではありません。
痛み、関節の動き、筋緊張など、 状態に応じて身体へ直接的な介入を行うことがあります。
ただし、脳卒中後の運動機能を改善していくためには、 本人が実際に身体を動かし、課題を繰り返し練習することも重要です。
2025年に公表されたEuropean Stroke Organisationの運動リハビリテーションガイドラインでも、 上肢について反復的な練習時間を追加することが提案されています。
また、複数の脳卒中リハビリテーションガイドラインでも、 課題に特化した反復練習が推奨されています。
目的を聞けば、 リハビリ全体の流れも理解しやすくなります。
「歩けるようになってきたのに、手はなかなか動かない」
これは脳卒中後に聞くことの多い悩みです。
上肢・手指と下肢では、 必要とされる運動や日常生活での使われ方が異なります。
歩行では両脚を使う場面が多く、 立つ、トイレへ行く、移動するなど、 生活の中で繰り返す機会も生まれやすくなります。
一方で手は、 麻痺側が使いにくければ、 反対側の手だけで多くの動作を代償できてしまいます。
その結果、麻痺側の手を使う機会が少なくなっていくことがあります。
「動かないから使わない」だけではなく、 使わない状態が続くことで、 生活の中でさらに使われなくなっていくことがあります。
また、手を使うためには運動機能だけではなく、 感覚も非常に重要です。
物に触れたことが分かる。 どのくらい力を入れているか分かる。 手や指がどこにあるか分かる。
こうした感覚情報は、 物をつかむ、離す、操作するという細かな動作に関係します。
脳卒中後の感覚障害は、 麻痺側上肢の使用や運動課題の遂行にも影響することが報告されています。
そのため、 「手が動くか」だけではなく、運動・感覚・実際の使用状況を含めて評価すること が大切です。
回復期病院では毎日のようにリハビリを受けていたのに、 退院後は週数回、場合によっては週1回程度になる。
不安になるのは当然だと思います。
しかし、 専門家と一緒にリハビリする回数だけが、リハビリの量ではありません。
退院後には、
など、さまざまな選択肢があります。
専門家とのリハビリで現在の状態を評価し、 必要な課題を決め、 自主リハビリや生活の中で繰り返す。
そして次回にもう一度評価する。
生活期では、この循環を作ることが重要です。
病院にはたくさんの専門職がいるため、 「これを誰に聞けばいいの?」 と迷うことがあります。
大まかな目安としては、次のように考えると分かりやすいです。
| 病気・治療について | 医師 |
|---|---|
| 薬について | 医師・薬剤師 |
| 身体の動き・歩行 | 主にPT(理学療法士) |
| 手の使用・生活動作 | 主にOT(作業療法士) |
| 言葉・飲み込み | 主にST(言語聴覚士) |
| 病棟での生活 | 看護師・担当スタッフ |
| 退院・制度・社会資源 | 医療ソーシャルワーカー・退院支援担当など |
| 退院後の介護サービス | ケアマネジャーなど |
担当のPTやOT、看護師など、 普段話しやすいスタッフに、
「このことは誰に相談したらいいですか?」
と聞けば大丈夫です。
Plusimへご相談いただいた方から、 実際に聞くことがある言葉です。
「退院してから自分で調べて初めて知った」
「もっと早く知っていれば選択肢が増えたと思う」
そう話される方もいます。
一方で、 病院が地域に存在するすべての自費サービスを把握することは難しく、 特定の民間サービスを積極的に紹介することにも慎重になる場合があります。
ですから、 「病院が教えてくれなかった=病院が悪い」 という単純な話ではありません。
ただ、ご本人やご家族には、 退院後の選択肢を知ったうえで決めてほしいと思います。
もちろん、自費リハビリが必要ない方もいます。
医療保険や介護保険のサービスで、 必要なリハビリを十分に受けられているのであれば、 無理に自費サービスを利用する必要はありません。
一方で、
- もっと改善を目指したい
- 特定の動作を詳しく見てほしい
- 退院後も専門的な評価を受けたい
- 感覚障害について詳しく見てほしい
- 高次脳機能障害について相談したい
- 仕事や趣味など具体的な目標に取り組みたい
といった場合には、 自費リハビリも選択肢の一つになります。
大切なのは、 自費を利用することではなく、自分にどんなリハビリが必要なのかを知ったうえで選ぶこと です。
疑問を持つことは、悪いことではありません
病院に入院していると、 「専門家に任せた方がいいのかな」 「こんなことを聞いたら失礼かな」 と思うことがあるかもしれません。
でも、ご本人やご家族が疑問を持つことは決して悪いことではありません。
なぜこの練習をしているのか。
今はどこまで回復しているのか。
退院までに何を目指しているのか。
家に帰ったあと、どんなリハビリが必要なのか。
むしろ、ご本人・ご家族と医療者が同じ目標を共有するためにも、 疑問を言葉にすることは大切です。
回復期病院は「ゴール」ではありません
回復期病院でのリハビリは、 脳卒中後の生活を取り戻していくうえで、とても重要な時間です。
でも、退院がリハビリのゴールではありません。
退院すると、 病院という整えられた環境から、 自宅や地域という実際の生活へ戻ります。
そこで初めて見えてくる課題もあります。
だからこそ、 入院中から退院後の生活を考え、 必要な支援やリハビリについて情報を集めておくことが大切です。
2025年に更新された脳卒中リハビリテーションの推奨でも、 退院・移行支援を早期から計画し、 本人や家族を含めながら退院後のリハビリや地域生活へつなげていくことが重視されています。
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Plusimに無料相談する参考文献
※全文を確認できるオープンアクセス文献のみを使用しています。
-
European Stroke Organisation (ESO) guideline on motor rehabilitation.
European Stroke Journal. 2025.
全文 -
Canadian Stroke Best Practice Recommendations:
Rehabilitation, Recovery and Community Participation Following Stroke.
Part One: Stroke Rehabilitation Planning for Optimal Care Delivery,
7th Edition Update 2025.
全文 -
Recommendations for Upper Limb Motor Recovery:
An Overview of the UK and European Rehabilitation after Stroke Guidelines.
2024.
全文 -
Upper Limb Motor Impairment Post Stroke.
全文 -
Does Sensory Retraining Improve Sensation and Sensorimotor Function Following Stroke:
A Systematic Review and Meta-Analysis.
全文 -
Interventions for sensory impairment in the upper limb after stroke.
Cochrane Database of Systematic Reviews.
全文