「もっとリハビリを頑張ってほしい」
ご家族から、このような相談を受けることがあります。
自主トレーニングをしない。リハビリに積極的ではない。以前より外出しなくなった。
そんな姿を見ると、「もう少し本人にやる気があれば」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、脳卒中後のリハビリにおける心理面は、単純な「やる気がある・ない」だけでは説明できません。
今回は、リハビリにおける心理面の重要性について考えます。
リハビリは、身体だけで行うものではありません
リハビリというと、筋力をつける、関節を動かす、歩く練習をする、麻痺した手を動かす、といった身体へのアプローチをイメージする方が多いと思います。
もちろん、これらは重要です。
しかし、人は機械ではありません。
「この運動を10回してください」と言われたからといって、誰もが毎日同じように取り組めるわけではありません。
その日の体調もあります。気分もあります。「本当に良くなるのだろうか」という不安もあります。
「やる気がない」と決めつける前に
たとえば、自主トレーニングをあまり行わない方がいたとします。
それだけを見ると、「やる気がない」と思ってしまうかもしれません。
「やる気がない」のではなく、
「やってもできないかもしれない」と思っているのかもしれません。
「自主トレをしてくれない」のではなく、
何をすればいいのか分からないのかもしれません。
「諦めている」のではなく、
何度も失敗して、自信を失っているのかもしれません。
行動だけを見て「やる気」と判断してしまうと、その背景にある本当の理由を見落としてしまうことがあります。
「自分にもできる」と思えること
心理面を考えるうえで重要な考え方の一つに、自己効力感があります。
簡単に言えば、「自分ならできそうだ」と思える感覚です。
たとえば、歩くことに何度も失敗している人へ、「もっと歩きましょう」と言うだけでは、なかなか前向きになれないかもしれません。
- 今日は昨日より少し長く立てた
- 手すりがあれば自分で立てた
- 前回より足が出しやすかった
こうした小さな変化を本人が実感できると、「もう少しやってみよう」と思える可能性があります。
目標は「歩けるようになる」だけではありません
リハビリでは「歩行能力を改善する」「上肢機能を改善する」といった目標を設定することがあります。
しかし、それは専門職側の目標です。本人にとって大切なのは、その先かもしれません。
歩けるようになって、どこへ行きたいのか。
手が使えるようになって、何をしたいのか。
同じ「歩く練習」でも、その先に本人にとって意味のある目的があるかどうかで、リハビリの意味は大きく変わります。
難しすぎるリハビリも、簡単すぎるリハビリも違う
何度やっても成功できないほど難しい課題を繰り返せば、「やっぱり自分にはできない」という経験が積み重なってしまいます。
反対に、簡単すぎる課題ばかりでは、新しい挑戦につながりません。
療法士の言葉もリハビリの一部です
同じ結果でも、伝え方によって受け取り方は変わります。
ではなく、
「ここまではできるようになりました。次はここを目指しましょう」
もちろん、できていないことを隠したり、根拠なく「大丈夫です」と励ましたりすることが良いわけではありません。
必要なのは、現在の状態を正しく共有しながら、できていること、変化していること、次に取り組むことを本人と共有することです。
家族の「頑張って」が負担になることもあります
ご家族も、「少しでも良くなってほしい」と思っています。
だからこそ、「もっと歩かないと」「リハビリしないと良くならないよ」「もっと頑張って」と言いたくなることがあります。
その気持ちは自然なものです。
ただ、本人がすでに十分頑張っている場合、その言葉がプレッシャーになることもあります。
逆に、危ないからと何でも家族が代わりに行ってしまうと、本人が挑戦する機会が減ってしまうこともあります。
どこで手伝うのか。
どこを本人に任せるのか。
家族の関わり方も、リハビリを取り巻く大切な環境の一つです。
心理面だけで回復が決まるわけではありません
ここは誤解してほしくないところです。
「前向きな人ほど良くなる」「本人の気持ち次第」という話ではありません。
脳卒中後の回復には、脳の損傷部位や程度、身体機能、感覚、認知機能、合併症、生活環境など、さまざまな要素が関係します。
心理面は、その中の一つです。
その人が取り組みやすい環境や課題をつくり、成功を実感できるようにする。その人にとって意味のある目標を一緒に考える。
それもリハビリ専門職にできる大切な支援です。
「やる気」の問題ではない場合もあります
脳卒中後には、うつ状態やアパシー(意欲低下)などがみられることがあります。
これらは単純な性格や「本人のやる気」の問題ではありません。
こんな変化が続く場合は、医師などへの相談も大切です
- 以前楽しんでいたことに興味を示さなくなった
- 強い落ち込みが続いている
- 眠れない、あるいは過度に眠ってしまう
- 食欲が大きく変わった
- 何をするにも極端に意欲が湧かない
こうした変化が続く場合には、リハビリだけで解決しようとせず、医師などの専門家へ相談することも重要です。
リハビリでは「できない理由」を考える
Plusimでは、原因を見つけること。それが改善への、最も重要なポイント。と考えています。
これは身体機能だけの話ではありません。
たとえば自主トレーニングが続かない場合にも、「本人にやる気がない」で終わらせるのではなく、なぜ続かないのか?を考えます。
- 課題が難しすぎないか
- 目的が本人に伝わっているか
- 効果を実感できているか
- 生活の中で実施できる内容なのか
- 疲労が強くないか
- 本人が本当に実現したいことにつながっているか
原因が違えば、必要な対応も変わります。
身体だけを見ても、その人のリハビリは分からない
筋力を測ることはできます。関節の動きを測ることもできます。感覚を評価することもできます。
しかし、それだけでは「この人がなぜリハビリを続けられないのか」までは分からないことがあります。
人には、それぞれ生活があります。家族があります。仕事があります。大切にしていることがあります。そして、これまで積み重ねてきた経験があります。
リハビリを「やらされる時間」から「自分のための時間」へ
リハビリは、療法士のために行うものではありません。
家族のためだけに行うものでもありません。
本人が「これができるようになりたい」と思うことへ近づくための時間です。
だからこそ、できないことだけを見るのではなく、できたことも一緒に確認する。
専門職が一方的に目標を決めるのではなく、本人と一緒に考える。
そして、小さな変化を次の挑戦につなげていく。
身体へのアプローチと同じくらい、そうした関わり方もリハビリでは大切だとPlusimは考えています。
CONSULTATION
リハビリについて、ご相談ください
「本人がリハビリに前向きになれない」
「自主トレーニングがなかなか続かない」
「退院してから自信をなくしているように感じる」
「本人に合った目標からもう一度考えてほしい」
Plusimでは、身体機能だけでなく、現在の生活やご本人が実現したいことまでお聞きしながらリハビリを考えます。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も受け付けています。