大事な人が、突然脳卒中になった。

昨日まで普通に話していた人が、突然うまく言葉を話せなくなる。 身体の片側が動かなくなる。 歩けなくなる。

ご家族にとっても、何が起きているのか分からないまま、 治療、リハビリ、転院、退院と次々に話が進んでいくことがあります。

「元の生活に戻れるのか」 「また歩けるようになるのか」 「仕事には戻れるのか」 「家に帰ってからどうすればいいのか」

いろいろなことが頭に浮かぶと思います。

でも、発症した直後にすべてを決める必要はありません。

まず知ってほしいのは、 脳卒中後の生活は、急性期の治療だけで完結するものではない ということです。

この記事では、脳卒中を発症してから急性期、回復期、退院準備、そして退院後の生活期まで、 ご家族に知っておいてほしいことを順番にまとめます。

まず、脳卒中後の大きな流れを知ってください

症状や重症度、治療内容によって経過は異なりますが、 脳卒中後のリハビリは大きく次のような流れで進みます。

01 急性期 治療・状態の安定
早期リハビリ
02 回復期 集中的なリハビリ
生活動作の獲得
03 退院準備 住環境・制度
退院後の支援
04 生活期 自宅・地域での生活
新しい目標へ

大切なのは、これらが完全に別々のものではないことです。

急性期の段階からその後の生活を考え、 回復期では退院後を想定したリハビリを行い、 退院後も必要に応じてリハビリを続けていきます。

急性期|まずは命を守り、状態を安定させる時期

脳卒中を発症すると、まず急性期病院で検査や治療が行われます。

脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあり、 病型や発症からの時間、全身状態などによって治療は異なります。

リハビリについても「できるだけ早くたくさん動けば良い」という単純なものではありません。 全身状態や神経症状などを確認しながら、安全性を考慮して進められます。

FAMILY POINT

この時期にご家族が確認しておきたいこと
  • どのタイプの脳卒中だったのか
  • 脳のどの部分が損傷したのか
  • 現在どのような症状があるのか
  • 今後どのような治療が予定されているのか
  • リハビリはどのように進んでいるのか
  • 回復期リハビリテーション病院への転院が必要なのか

また、脳卒中の症状は「手足の麻痺」だけではありません。

運動障害 手足が動かしにくい、力が入りにくいなど。
感覚障害 触った感覚が分かりにくい、しびれる、位置が分かりにくいなど。
失語症 言葉を話す、理解する、読む、書くことなどが難しくなることがあります。
高次脳機能障害 注意、記憶、認知、行動などに変化が生じることがあります。

見た目には分かりにくい症状もあるため、 「歩けるかどうか」だけではなく、 どのような機能に影響が出ているのかを確認しておくことが大切です。

回復期|「動けるようになる」から「生活できる」へ

状態が安定すると、必要に応じて回復期リハビリテーション病院などへ転院し、 より集中的なリハビリを行います。

ここで目指すのは、単に筋力をつけたり歩く練習をしたりすることだけではありません。

実際の生活にはさまざまな動作があります。

食事自分で食べる、道具を使う。
移動起きる、立つ、歩く、階段を使う。
身の回り着替える、トイレへ行く、入浴する。
コミュニケーション話す、理解する、家族と意思疎通する。
家事料理、洗濯、買い物など。
社会生活仕事、外出、運転、趣味など。

リハビリは、こうした「その人の生活」へ戻るための準備でもあります。

退院の直前になってから、退院後を考えるのでは遅い

退院後の生活について考え始めるのは、 退院が決まってからではありません。

回復期の途中から少しずつ準備していくことが大切です。

近年の脳卒中リハビリテーションの推奨でも、 退院・移行支援は早い段階から本人、家族、医療チームが一緒に進めることが重要とされています。

病院では問題なくできていることでも、 自宅へ戻ると環境がまったく違います。

病院には手すりがあります。 廊下は平らです。 必要な道具も揃っています。 困ったときにはスタッフがいます。

しかし自宅には、 玄関の段差、狭いトイレ、浴槽、階段など、 病院とは違う環境があります。

だからこそ、退院前から「家に帰ったらどう生活するのか」を具体的に考える必要があります。

退院までに準備しておきたいこと

すべての方に必要というわけではありませんが、 退院前には次のような項目を確認しておくと安心です。

□
退院後にどこで生活するのか
自宅、家族宅、施設など。
□
家の環境
玄関、段差、階段、寝室、トイレ、浴室など。
□
必要な福祉用具
杖、装具、車椅子、ベッド、手すりなど。
□
介護保険などの制度
必要に応じて申請やサービス調整を行います。
□
退院後のリハビリ
外来、訪問、通所、自主リハビリなど。
□
自主リハビリの方法
自宅で何を、どの程度行うのか確認します。
□
服薬と再発予防
薬の管理や生活習慣について確認します。
□
家族が必要な介助方法
移乗、歩行、着替え、入浴など。
□
仕事や運転など今後の目標
退院後すぐでなくても、長期的な目標として共有しておきます。
□
困ったときの相談先
誰に連絡すればよいのか確認しておきます。

特に介助が必要な場合には、 家族が実際に介助方法を練習しておくことも重要です。

退院支援に関する研究でも、家族・介護者の準備状況を確認し、 必要な情報提供や介助方法の教育を行い、 退院計画に家族を参加させることの重要性が指摘されています。

そして退院。「リハビリ終了」ではありません

退院すると、
「患者」から再び「生活者」になります。

退院は、とても大きな節目です。

一方で、退院したからといって、 すべての課題が解決したわけではありません。

むしろ自宅に戻って初めて分かることがあります。

「病院では歩けたけれど、外を歩くのは怖い」

「家のトイレでは動きにくい」

「料理をしたいけれど、片手では難しい」

「電車に乗れるか不安」

「仕事へ戻りたいけれど、以前のようにできるか分からない」

病院という整った環境から実際の生活へ戻ることで、 初めて見えてくる課題があります。

近年の研究でも、入院リハビリから自宅へ戻ったあとには、 住環境や地域生活の中で新しい障壁に直面することが指摘されています。

生活期のリハビリは「維持するだけ」ではありません

退院後の時期は「生活期」と呼ばれることがあります。

生活期という言葉から、 「もう改善を目指す時期ではない」 「今の状態を維持するだけ」 というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、生活期のリハビリには別の大切な役割があります。

病院で獲得した能力を、 実際の生活の中で「使える能力」にしていくこと。

たとえば「歩ける」という能力があっても、 その先の目標は人によって違います。

  • 一人で近所を散歩したい
  • スーパーへ買い物に行きたい
  • 電車に乗りたい
  • 仕事へ戻りたい
  • 旅行へ行きたい
  • 家族と外食したい

リハビリの目的は、 「歩行練習をすること」そのものではありません。

その人が何のために歩きたいのか。

生活期では、そこまで考えることが重要になります。

退院後もリハビリにはいくつもの選択肢があります

退院後のリハビリは一つではありません。

その方の状態や年齢、制度、生活環境、目標などによって、 利用できるサービスは異なります。

医療保険によるリハビリ 状態や時期などに応じて外来リハビリなどを利用する場合があります。
介護保険によるリハビリ 訪問リハビリや通所リハビリなどがあります。
自主リハビリ 専門家から教わった内容などを生活の中で継続します。
自費リハビリ 保険制度外で、本人の目標や希望に合わせて利用する選択肢もあります。

自費リハビリを必ず利用する必要があるわけではありません。

医療保険や介護保険のサービスで必要な支援を受けられている方も多くいます。

一方で、 「もっと改善を目指したい」 「特定の動作を詳しく見てほしい」 「高次脳機能障害や感覚障害について相談したい」 「自分の目標に合わせてリハビリを続けたい」 という場合には、自費リハビリも一つの選択肢になります。

専門家とのリハビリだけが、リハビリではありません

退院後は、病院にいた頃と比べて専門家と一緒にリハビリをする時間が少なくなることがあります。

だからこそ重要になるのが、 自主リハビリと日常生活です。

専門家とのリハビリは「点」。
自主リハビリと日常生活で、その点と点をつないでいく。

専門家と一緒に、 今の状態を評価する。 必要な練習を考える。 自宅でもできる形にする。 生活の中で繰り返す。 そして次回、変化を確認する。

生活期では、この循環をつくることが重要だとPlusimでは考えています。

ご家族に、最後に伝えたいこと

脳卒中になる前とまったく同じ生活に戻ることだけが、 唯一のゴールではありません。

もちろん、できなくなったことを取り戻すためにリハビリをすることは大切です。

でも同時に、 今できること、 新しくできるようになったこと、 これから挑戦したいことを見つけていくことも大切です。

リハビリは、
その人がもう一度
「自分の生活」をつくっていくための手段です。

そしてもう一つ。

ご家族だけですべてを背負う必要はありません。

分からないことがあれば、 医師、看護師、リハビリ専門職、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなど、 それぞれの専門家に相談してください。

退院後も、必要に応じて専門家の力を借りながら、 その人とご家族に合った生活を少しずつ作っていくことができます。

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退院後のリハビリについて相談したい方へ

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「今の状態でも改善を目指せるのか相談したい」
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参考文献

※全文を確認できるオープンアクセス文献を使用しています。

  1. Mountain A, et al. Canadian Stroke Best Practice Recommendations: Rehabilitation, Recovery and Community Participation Following Stroke. Part One: Stroke Rehabilitation Planning for Optimal Care Delivery, 7th Edition Update 2025.
  2. Rahman M, et al. Improving caregiver preparedness in the care transition of stroke patients: a scoping review.
  3. Pucciarelli G, et al. Effectiveness of interventions to support the transition home after acute stroke: a systematic review and meta-analysis.
  4. Jee S, et al. Early Supported Discharge and Transitional Care Management After Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2022.
  5. Rehabilitation Transition Program to Improve Community Participation Among Stroke Survivors: A Randomized Clinical Trial.