脳卒中と筋膜
筋膜ってよく聞きますよね?
筋膜は筋を包み込んでいる膜のことで(図1)肩こりやむくみ、冷えまでにも効果があるとされている【筋膜へのアプローチ】は、筋膜はがしとして一般的にも行われています。
図1 筋の模式図
ではこの筋膜へのアプローチは、脳卒中後にみられる体の硬さにも有効なのでしょうか?
もし有効なら、どんな場合に有効なのでしょうか?
文献を参考にしながら紹介していきます。
脳卒中後の筋膜の変化
筋肉は収縮により関節を動かします。反対に、ストレッチのように伸張することもできます。この収縮と伸張を繰り返すことで筋膜は健康な状態を保ちます。
一方で人には動きに癖がありよく動く筋肉と、あまり使われない筋肉にわかれます。この不均等さが筋膜に異常をきたす大きな要因になってきます。
さて脳卒中を発症すると麻痺などが原因で、運動障害が生じます。
基本的には身体の一側に動きにくさが生じるため、筋肉の使用頻度には大きな不均等さが生じます。また、麻痺側内でも働きやすい筋肉と働きにくい筋肉があり、健常人よりも身体のバランスが崩れています。
これらのことから、脳卒中を発症すると筋膜に異常をきたす可能性は非常に大きいと考えられます。
では文献ではどうでしょうか?
脳卒中患者の筋膜に関する報告はまだ大きはありませんが、麻痺側の足の裏の筋膜が非麻痺側よりも肥厚している報告があります1)。今後も上肢や他の身体部位についても、報告が増えてくることが予想されます。
脳卒中の硬さに筋膜はがしは有効なのか?
では実際、脳卒中後の硬さには有効なのでしょうか?
有効だったと報告している文献がいくつかあります。
1つは急性期病院でのリハビリで、麻痺側上肢へ筋膜リリースを実施して運動の改善がみられた報告2)です。もう1つは、維持期(生活期)でのリハビリで、胸部筋群(大胸筋・小胸筋)へ筋膜リリースを実施し可動域や動作速度が改善した報告3)です。
いずれの報告でも、効果があったと報告されており脳卒中にも筋膜へのアプローチが有効です。
ただし気をつけなければならないのは、脳卒中後の硬さや動かしにくさの原因は千差万別で全員に有効ではありません。一方で、維持期では2次的な問題が大きくなってくるため、筋膜へのアプローチが有効なケースが多いのは事実です。
このように、筋膜へのアプローチは一般的に行われている一方で、自分に合っているかどうかの判断が難しい手法です。脳卒中後にこりをほぐしたり、疲れをとるなどの慰安目的いがいで行う場合は、1度専門家に相談してから行うことをおすすめします。
参考文献
2)勝又 泰貴ら.脳卒中片麻痺患者の痙縮に対する筋膜リリースの効果―シングルケーススタディによる検討―.2009.第44回日本理学療法士学術大会
3)武田 庄索ら.維持期脳卒中片麻痺患者麻痺側胸部筋群への筋膜リリースの応用.2005.第40回日本理学療法学術大会
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