【線維筋痛症】安静時の脳の特徴

人の脳は絶えず働いています。本を読んでいるとき、歩いているときはもちろん寝ているときやぼーっとしているときも、脳は働いています。

今回は、安静時(何もしていないとき)の脳の働きに関して、線維筋痛症患者さんの特徴について書いていきます。

安静時の脳のネットワーク

1日の中で、人はぼーっとする時間があります。仕事がひと段落して小休憩する、長時間運転して休憩する、本を読んでいて区切りがついたので休憩するなど、集中したあとに休憩の意味をこめてぼーっとすることが多いと思います。

ぼーっとしているとき、脳はなにをしているのでしょうか?実はとても忙しく働いています。この安静時に働いているネットワークを【デフォルトモードネットワーク】と言います。デフォルトは、パソコンやスマートフォンなどでも聞く言葉ですが、〔初期設定・初期値に戻す〕の意味です。常に集中できる状態をキープしたり、内省(頭の中で考え事をする)する目的があります。

線維筋痛症患者の安静時の脳の特徴

実際報告されている線維筋痛症患者の脳の特徴の一部を紹介します。

下降性疼痛抑制系の機能不全との関係

1. 帯状回吻側部と扁桃体、海馬、脳幹部との 機能的結合が弱い
2.視床と眼窩前頭皮質の機能的結合が弱い

(Jensen,K.B. 2012)

脳内痛み関連ネットワークの抑制性と興奮性の機序のバランスの障害の反映

1.機能的結合の増強

1)帯状回と島皮質、基底核との機能的結合が強い
2)第二次体性感覚野と尾状核の機能的結合の増強
3)淡蒼球と扁桃体・上側頭溝の機能的結合の増強
4)内側前頭前野と後部帯状回・尾状核の機能的結合が増強

2.機能的結合の減弱

1)前部帯状回と扁桃体および中脳水道周囲灰白質
2)視床と島皮質および中脳水道周囲灰白質
3)島皮質と被殻
4)第二次体性感覚野と運動野および後部帯状回
5)後部帯状回と上側頭溝
6)PAG と視床との結合は抑うつのスコアと逆相関していた

(Cifre, I. 2012)

このように、線維筋症患者の脳には特徴があり、精神面や痛みと関係していることがわかってきています。つまり、身体が痛い症状ですが、その原因が身体に無い患者もたくさんいる可能性があるということです。
一方で、リハビリテーションの運動療法によって脳のネットワークに変化が生じた報告(Flodin, P. 2015)もあるため、運動と今回の脳の特徴を意識したリハビリを組み合わせた内容が求められています。

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