ある日突然経験したことのない痛みに襲われ、病院に行ったけど原因がわからない。薬も効かず時間が経っても少しも楽にならない。
いくつかの病院を受診してやっと【線維筋痛症】と診断されたけど、処方された薬を飲むだけでは完治しない。リハビリでマッサージや運動をしているけど効果がなかなか見られない。
これが線維筋痛症です。まだまだ明確な治療法がなく、薬が効く人と効かない人がいるこの疾患に悩まされている人は、日本だけでも推定200万人とも言われています。【原因がわからない痛み】が自分にあるだけでも心理的には非常に辛いのに、【治療法がない】ことはさらに辛い経験になってしまいます。
薬が思うように効かない患者さんには、リハビリテーションが実施されることもありますが、【運動する】だけでは効果が見られない方も多くいらっしゃいます。
そこで本記事では、第10回線維筋痛症学会学術集会で医師向けに講演した経験もある私が、数十名の線維筋痛症患者さんへのリハビリの経験も踏まえ、線維筋痛症のリハビリテーションについて書いていきます。
痛みと心理面の関係
痛みの定義
組織損傷が実際に起こった時、あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験(国際疼痛学会 IASP, 2020)
痛みを感じると、嫌な気分になります。膝を擦りむいた時、料理をしていて指を切った時、小指を角にぶつけた時…痛みだけではなく、情動(快・不快)が働きます。これらの場面をイメージしただけでも嫌な気分になるように、実際に痛み感覚が今なくても情動のみが働くのが経験できると思います。
このように、痛みの感覚と心理面は深い関係にあり、この深いつながりが慢性痛の1要因となっています。つまり、身体に問題がなくても記憶に残った感覚が不快の情動を引き起こしてしまいます。
リハビリテーションでは、この心理面を考慮した訓練が必要であり、ただ体をほぐしたり運動するだけでは痛みが改善しないケースが多く存在します。ここで1つ重要なのは、患者さん自身が身体以外にも原因があることを理解することです。実際に、身体に痛みを感じているため、身体に問題があると思い込みがちですが、他の要因にも目を向けられるように【教育的な介入】がリハビリでは重要です。
運動+知覚のリハビリ
運動するだけは改善しない患者さんでは、知覚が手掛かりになります。知覚とは、何がどこに触れているだったり、身体のどこがどれくらい動いたのかなどを知る作業になります。運動することを重視している人にとって、知覚を意識することは今までとは違う経験になります。ただ動くのではなく、どこをどれくらい動かすのかを意識するだけでも脳の働きは大きく変わります。
知覚を意識するときに重要なのは、痛みがない部位から始めることです。痛みがある部位では、どうしても痛みが邪魔してしまい、うまく知覚することが出来ません。そのため、【運動=痛い】の構造が出来上がってしまい動くことに消極的になってきてしまいます。まずは、痛みがない部位の知覚を意識することから始めていき、痛みがある部位ではどんな感覚がわかりやすいのかを探していく順番が大切です。痛みが長期化している人は、自分が思っている以上に知覚が難しくなっているので、積極的に行っていきたいリハビリです。
いかがでしたでしょうか?
自費の訪問リハビリPlusimでは、線維筋痛症のリハビリの経験から慢性痛の方に特化したプログラムを提供しています。なかなか改善しない痛みに悩まれている方、まずは体験してみてください。