脳梗塞、脳(内)出血、くも膜下出血の3つを総称して脳卒中と言いますが、それぞれみられる後遺症は実は異なっています。リハビリテーションにおいては、運動麻痺や高次脳機能障害など同じ後遺症に見えても、改善の速度や仕方が異なっているので注意が必要です。
そこで本記事では、脳出血と脳梗塞についての簡単な説明と症状の違いについて書いていきたいと思います。
梗塞と出血
脳梗塞はその名の通り、【脳の血管が詰まったり狭まったりすることで、その先の脳に血液がいかず酸素や栄養不足になってしまう病気】です。血管が詰まったり狭まったりする原因によって名称が異なっていて、血の塊が詰まる脳血栓症や空気や脂肪などが詰まる脳塞栓症があります。また一時的に詰まりすぐに解消された場合は、一過性脳虚血発作(TIA)と言います。
一方脳出血は、【脳の血管が破れて出血する病気】です。高血圧などが原因となることが多く、動脈硬化などによって血管がもろくなると発症しやすい疾患です。また出血により、出血部位よりも先に血液がいかず、稀に軽い脳梗塞を併発することもあります。
血管が詰まるか破れて出血するかしか差がないように見えますが、後遺症の観点から見ると、実は大きな違いがみられます。脳梗塞は、どの血管のどの辺で詰まったのかで重症度や症状が大まかに決まります。
一方脳出血の場合は、どの血管から出血したのかだけではなく、どれくらい出血したのかによって重症度が変わり、後遺症も大きく変わってきます。さらに脳は頭蓋骨に収まっていて液体が充満した状態なため、破れた血管から出た血液が入る隙間がありません。よって出血した場合は、血液が脳を圧迫しながら広がってくことになります。すると圧迫された脳には血液がいきにくくなり、<仮死状態>になってしまいます。そのため、発症初期の症状は本来の症状よりもはるかに重くなってしまいます。
例えば、視床出血だと血管が破れたことにより視床への血流量が低下し、視床が壊死していきます。加えて視床周囲の組織が圧迫されて仮死状態になり、視床が損傷されたことで生じる症状以外にも、圧迫されて仮死状態になった部分の症状もみられます。
この仮死状態は、血液が吸収されるなどで徐々に回復するのと同時に症状の改善もみられていきます。これが、脳出血が脳梗塞より劇的な変化をみせる理由の1つです。ただ、出血量や場所によっては大きな変化がみられないこともあるので注意が必要です。
このように、梗塞と出血には違いがありリハビリを行なっていく上では考慮する必要があります。特に発症から半年までは大きく改善する時期なので、適切なリハビリを行うことが大切です。
参考文献
・医療情報科学研究所:病気がみえる(vol.7)脳・神経、メディックメディア、2017