「触られているのは分かる。でも、自分の手がどこにあるのか分かりにくい。」
脳梗塞や脳出血のあとに起こる症状というと、 まず「運動麻痺」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、脳卒中では身体を動かす機能だけでなく、身体から入ってくる感覚を受け取り、認識する機能にも 影響が生じることがあります。
これが「感覚障害」です。
そして感覚障害は、 単に「触った感じが鈍い」という問題だけではありません。
歩く、立つ、手を使うといった 日常の動作にも影響することがあります。
脳卒中後の「感覚障害」とは?
私たちの身体には、 常にさまざまな感覚情報が入ってきています。
たとえば、今座っているだけでも、 椅子に触れている感覚や、 足の裏が床についている感覚、 膝や股関節がどのくらい曲がっているのかという情報が 脳へ送られています。
脳卒中によって、 こうした情報を受け取ったり、 処理したりする脳の働きが障害されると、 感覚が分かりにくくなることがあります。
なぜ感覚が分かりにくいと、動きにも影響するのでしょうか?
私たちは身体を動かすとき、 脳から筋肉へ一方的に命令を送っているわけではありません。
・身体を動かす。
・身体から感覚情報が返ってくる。
脳はその情報をもとに、 次の動きを調整していきます。
身体を動かすためには、 「運動」と「感覚」が繰り返しやり取りされています。
この循環を何度も繰り返しながら、 私たちは身体をコントロールしています。
そのため感覚が分かりにくくなると、 身体を動かすために必要な情報が十分に得られなくなることがあります。
たとえば、歩くときにも感覚を使っています
歩くときには、 足の筋力だけを使っているわけではありません。
足の裏から、 地面に接触したことを感じます。
足首や膝、股関節から、 自分の脚が今どの位置にあるのかという情報が入ります。
身体のどちら側に体重が乗っているのかという情報も使っています。
「足がどこにあるのか分かりにくい」
「足をついている感覚が薄い」
「歩くときに足元をずっと見てしまう」
こうした動きがみられる場合、 筋力だけではなく、 感覚の問題が関係していることもあります。
手を使うときにも感覚は欠かせません
たとえばコップを持つとき。
私たちはコップをずっと見ながら 握る力を調整しているわけではありません。
手から入ってくる感覚を使って、 「持てている」「滑りそう」「少し強く握りすぎている」 といったことを無意識に判断しています。
感覚が分かりにくいと、 必要以上に強く物を握ったり、 反対に物を落としてしまったりすることがあります。
ボタンを留める、箸を使う、 ポケットの中から物を取り出すといった細かな動作でも同じです。
「触られたことが分かる」だけでは十分ではありません
感覚の評価というと、 目を閉じて「触られたのが分かりますか?」と確認する場面を イメージする方もいるかもしれません。
もちろん、触覚を確認することは大切です。
しかし実際の動作には、 より複雑な感覚処理が必要です。
- どこを触られているのか
- どちらの方向へ関節が動いたのか
- 自分の腕や脚がどこにあるのか
- 二つの物の違いを感じ分けられるか
- 触った物が何なのか判断できるか
さらに、 それらの感覚を実際の動作の中で使えているかも重要です。
感覚障害は改善するのでしょうか?
これは、感覚障害がある方やご家族から よく聞かれる質問の一つです。
脳卒中後の感覚障害については、 感覚機能そのものの回復や、 感覚情報を使う能力の改善を目的とした さまざまなリハビリが研究されています。
感覚を識別する練習などによって、 一部の感覚機能や運動・動作の改善につながる可能性が報告されています。
一方で、すべての方に同じ方法が有効であると 言える段階ではありません。
研究から分かっていること
脳卒中後の感覚再教育については、 触覚や位置覚、感覚識別能力などの改善を示した研究があります。
また近年の研究では、 感覚を識別する訓練を、 実際の動作を練習するリハビリと組み合わせることで、 一部の運動機能や歩行能力の改善につながる可能性も示されています。
ただし、研究数や研究方法にはばらつきがあり、 現在も十分な検証が必要な分野です。 「この刺激をすれば必ず感覚が改善する」というものではありません。
感覚障害のリハビリでは何をする?
感覚障害のリハビリは、 ただ麻痺側の手足を触ればよいわけではありません。
どの感覚が問題になっているのか、 そしてその感覚障害がどの動作へ影響しているのかを考えながら 内容を組み立てます。
感覚だけを練習すればいいわけではありません
ここはPlusimが特に大切にしているところです。
感覚障害があるからといって、 その方の動きにくさの原因が すべて感覚にあるとは限りません。
筋力や関節の動きにくさが関係している場合もあります。
運動を組み立てる脳の機能や、 身体の認識、注意などが関係している場合もあります。
複数の要素が組み合わさっていることもあります。
筋力が弱いから、筋力だけを見る。
それでは「なぜ動きにくいのか」を十分に説明できないことがあります。
Plusimでは「原因を分析する」ことから始めます
Plusimでは、 症状に対して最初から決まったリハビリを行うのではありません。
「なぜ、その動作がやりにくいのか」 を分析することから始めます。
それが改善への、最も重要なポイント。
感覚の変化を、生活の変化へ
感覚を良くすること自体が、 リハビリの最終目的ではありません。
足の裏を感じられるようになったことで、 立つときに麻痺側へ体重を乗せやすくなる。
手の位置が分かりやすくなったことで、 物へ手を伸ばしやすくなる。
触った物の情報を使えるようになったことで、 日常生活で麻痺側の手を使う機会が増える。
大切なのは、 感覚の変化を「できること」の変化へつなげることです。
そして最終的には、 その方が実現したい生活へつなげていく。
Plusimは、そこまでをリハビリだと考えています。
CONSULTATION
感覚障害のリハビリについて、ご相談ください
「麻痺側の手足の感覚が分かりにくい」
「感覚障害に対するリハビリを受けたい」
「筋力以外の原因も詳しく見てほしい」
Plusimでは、身体の感覚を含めて
動きにくさの原因を詳しく分析します。
ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も受け付けています。
参考文献
・Carey LM, et al. The effectiveness of somatosensory retraining for improving sensory function in the arm following stroke: a systematic review.
・Does Sensory Retraining Improve Sensation and Sensorimotor Function Following Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis.
・Effects of somatosensory discrimination training on motor and functional recovery in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis.
・Neurophysiotherapy for somatosensory impairment in patients with stroke: A systematic review.
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、 個別の症状やリハビリ方法については医師・リハビリテーション専門職等へご相談ください。